ひなわんこの桃太郎
むかし、むかし……そんなに昔じゃなかったわ。
今や、今や、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでおりました。
おじいさんは山へ芝刈りに(行くつもりでしたが、誤って竹を切りに行ってしまいかぐや姫ルートに分岐し)、おばあさんは川へ洗濯に行きました。
おばあさんが川で試験管を洗濯していると、犬がやってきておばあさんに話しかけてきました。
「桃太郎さん、桃太郎さん、お腰につけたきび……」
「犬さん、犬さん、出番がまだ早い。けれどちょうど良かった」
そう言っておばあさんは犬のDNAを採取しました。
犬の出番はもう終わりです。
そうしていると、川の上流から大きな桃がどんぶらこ~、どんぶらこ~と流れてきました。
「たいそうな桃がある。これは研究価値が大きいぞ」
おばあさんは桃を拾って帰りました。
おばあさんが桃を研究室に持って帰ると、先におじいさんが帰ってきていて、かぐや姫……ではなくしらべ姫にかぼちゃプリンを買い与えているところでした。
おばあさんがさっそく桃に犬のDNAを振りかけると、大きな桃がパカリと割れて中から元気なひなわんこが出てきました。
ひなわんこは、
「この流れで桃のDNAが混入(コンタミ)しないの、おかしいよ」
と言いましたが、つつがなくお話は進みます。
ひなわんこと、しらべ姫はすくすく育ち、しかし花粉症にかかってしまいました。
「おじいさん、おばあさん、この鬼(花粉)を退治しなくてはなりません」
ひなわんこがそう言うと、おじいさんは
「それなら『ひなわんこ』と書かれたのぼり……では芸が無いので、このルームアバター権を持っていきなさい」
おじいさんはSHOWROOMのスタッフなのでした。
一方でおばあさんは、
「それなら、きびだんご……ではやはり芸が無いので、この緑のだるまサブレを持っていきなさい」
しらべ姫は
「それなら、かぼちゃプリン……は私が食べるので、かわりに『忘れろビーム』の使い方を教えましょう」
すっかりフル装備となったひなわんこは、
「良し!いってきわんこ~」
そう言って、意気揚々と旅立ちました。
ひなわんこが歩いていると、犬……はもう出番が終わったので、早くもサルがいました。
サルは大きな岩のおもしに敷かれていて、
「I know every magic trick under the sun......」
と言っていました。
「西”遊”記”じ”ゃ”な”い”で”す”ぅ”~~~!!」
と、ひなわんこはツッコミを入れましたが、このままでは埒が明かないので、圧力鍋をぶつけて大きな岩を破壊しました。
「So thank you. I will join your journey!」
こうしてサルが旅の仲間に加わりました。
さらにひなわんことサルが歩いていると、道の途中で中日のドラゴンがおりました。
「He is not Doara. Why ?」
サルはドアラが中日のマスコットではないのか?と問うとひなわんこは
「ふふん、中日ドラゴンズにはシャオロン&パオロンというマスコットもいるので、きっとシャオロンでしょう」
と得意げでしたが、中日のドラゴンはなんとそれを否定したのです。
「いいえ、私はシャオロンでもパオロンでもありません。ましてやドアラでもありません。私は誰なのでしょうか?」
中日のドラゴンはアイデンティティの危機にありました。
「こいつは重傷だ。こういうときには、忘れろビーム!!」
ひなわんこは中日のドラゴンに忘れろビームを浴びせました。
「ん?ドラゴンは何を考えていたんだっけ?」
「わんこ達について来てくれれば分かるかもしれないよ?」
こうして中日のドラゴンが旅の仲間に加わりました。
ひなわんことサルと中日のドラゴンが歩いていると、作者のタカアシガニが待っておりました。
「ここからの展開は巻きでいこう。キジは出てこないし、鬼ヶ島に行かないから船も必要ない。花粉の元凶のスギ樹林はあっちに行けばあるぞ」
「それはどうも御親切に」
「そしてカニである私の出番もここで『おしまい』だから介錯を頼む。昔からカニを倒すには熟れる前の緑色のカキを投げつけるべしと相場が決まっている」
そう聞くや否や、サルがひなわんこから緑のだるまサブレを受け取ると
「This is a green thing which we only have」
と言ってカニに投げつけました。
「まあ緑色ならよかろう……うっ」
カニは絶命しました。
ひなわんこ達の旅はもうすぐ佳境です。
ひなわんこ達はスギ樹林にやって来ました。
悪いスギ達は邪悪な笑みを浮かべながらこう言います。
「マンモーニの被子植物どもならいざ知らず、我々のような裸子植物を倒すには一筋縄ではいかないぞ!」
しかし、それでひるむひなわんこではありません。
「花粉退治ならば燃やし尽くすしか方法は無い。かかれ!」
そうひなわんこが号令をかけると、サルと中日のドラゴンがスギたちにとびかかりました。
中日のドラゴンは炎を吐き、サルは
と唱えながら炎の妖術を繰り出しました。ひなわんこも火打石で火をつけてまわります。
「カチカチ山にしてくれるわ!燃えろ燃えろ!」
スギ達はひとたまりもありません。
「ぐ、ぐわぁ~!!!……しかし我々を倒しても第二第三の花粉症に悩まされることになるぞ!アレルギーとはそういうものだからな……ぐふっ」
スギはそう言って絶命しました。
すっかり燃え尽きた森に、花粉が飛ばないタイプの木を新しく植えてひなわんこたちは帰って行きました。
さて、スギを退治して人々に感謝はされましたが、鬼ヶ島と違って宝の山があるわけではありません。
仕方が無いので、ひなわんこはSHOWROOMで配信することになりました。
サルと中日のドラゴンはわんこのルームアバターを被り、リスナーとなり、しらべ姫もこっそりリスナーになりました。
「皆さま~こんばんわんこですよ~」
おや、今日もひなわんこの配信が始まったようです。
それではこのあたりで、めでたしめでたし。