「なろう小説」は本当にストレスが少ないのか?
「小説家になろう」というプラットフォームは登録すれば誰でも小説を投稿できるため、それはそれは多くの、多岐にわたる小説がある。
ある程度大きな流行がいくつかあるものの、当然それらも個々の作品を見ていけば細部はそれぞれの書き手で違っているだろう。
しかし、そんな膨大な規模を誇る投稿小説を、十把一絡げにして見下し「なろう小説」と呼んで蔑んでいる人々の中にはある程度共通した「なろう小説像」があるように思われる。
そして「なろう小説」への批判、偏見、軽蔑においてよく言われるのが「なろう小説は読者がストレスに耐えられないのでストレスフリーである」ということである。
この記事ではそんなサンドバッグとしての「なろう小説」のストレスについていくつかの典型的なパターンに分けて考えていく。
異世界転生
現実世界(現代日本)ではニート、ひきこもり、コミュ障、底辺アルバイターなどなど様々な負け組要素を抱えたそろそろ若さも失いかけのダメ人間がトラックに轢き殺される。
その死が手違いであったということで神、あるいは世界の管理者から異世界への転生を約束されチートスキルをもらう(解析系が大当たりの強スキルらしい)。
日本より文明レベルあるい文化レベルの低い異世界へ転生してからは、もろもろのアドバンテージにより活躍し、美しい種族のガールフレンドとか嫁とかできて幸せ。
異世界転生系作品の概要についてはこんなところだろう。
さて、そのストレスだが……
いきなりデカいストレスがありますがな!
アホ程生々しい失意と停滞の描写!トラックにひかれるという自ら命を絶つ選択さえできない理不尽と、それさえも救いに感じてしまうようなひどい有様!しかも神様の不注意からくるミスで死ぬ程度のちっぽけさまで知らされる!
ストレスでしょこれ!
転生してからが長いっつってもよぉ!チートをもらって、ダメな自分とおさらばしてやることが女体の堪能と!謙虚なんだか傲慢なんだか分かんねえイキリと!あと日本食なんだろ!?
むしろカタルシスが足りてないよこれ!
もう貧困!カタルシスの貧困だよこんなの!
悪役令嬢転生
やりこんでいた乙女ゲームの悪役令嬢に転生した主人公は、追放エンドにされないよう奔走する過程で王子様たちに好かれるようになり……
どっから出てきたんだよその悪役令嬢はよぉ!
乙女ゲームに簀巻きにされてお家取り潰し+追放を言い渡されるエンドになるレベルのド畜生悪役令嬢居ねえから!
そもそも主人公の乙女に転生できねえのかよ!わざわざ破滅に向かうキャラクターを増設してまでそっちに転生してんじゃねえよ!
ストレスに決まってんだろ、こんなめんどくさい状況!
生粋の貧乏くじ体質か!
パーティリストラもの
勇者パーティからお荷物だと見捨てられた主人公だが、自身の持つ地味そうなスキルの真価に気づきパーティを見返すための奮闘記が始まる……
見捨てられないのが一番いいに決まってんでしょ!
勇者パーティ書いてるのも作者でしょ!なんで見捨てちゃうんだよそこで!
なに?読者層の高齢化に伴いこういうリストラものも増えましただと……?
現実と異世界の両方でリストラされて
ストレス2倍ですってか!?
どんな仕打ちだよ、ストレス大好きか?
MMOデスゲーム系
いきなりデスゲームはストレスの塊だよ!
こういうのはだいたいPVPも起きて、なし崩し的に人を手に掛けちゃうからな!
結論
偏見で語られる「なろう小説」のテンプレには実はストレスが多い。
むしろ、不幸の再生産の上に出来ているエンタメであるとも言える。
※とはいえ、これらは偏見で語られるテンプレに過ぎない。そうでない作品もたくさんあることは改めて確認しておこう。